腰痛の中でも頻度の多い筋筋膜性腰痛症

筋筋膜性腰痛症(きんきんまくせいようつうしょう)は、腰痛の中でも非常に一般的な症状です。名前から分かるように、「筋」は筋肉、「筋膜」は筋肉を覆っている膜を指します。この腰痛症は、腰の筋肉や筋膜に生じる異常が原因で痛みが生じるものです。具体的には、筋肉の過度の緊張や疲労、筋膜の硬化や炎症が原因となって、腰に痛みや不快感が発生します。

筋筋膜性腰痛症は、激しい痛みを伴うことは少ないものの、慢性的な痛みや鈍い痛みが続くため、生活の質を低下させる原因となることが多いです。特に、長時間の座り仕事や不適切な姿勢、運動不足、ストレスなどが発症のリスクを高めます。

筋筋膜性腰痛症の原因

筋筋膜性腰痛症の主な原因としては、以下のようなものがあります。

  1. 不適切な姿勢
    長時間の不良姿勢は、腰の筋肉に過度な負担をかけ、筋膜を硬化させる原因となります。特に、デスクワークなどで長時間座り続けることが多い人は、筋筋膜性腰痛症になりやすいです。
  2. 筋肉の過剰使用
    スポーツや仕事で同じ動作を繰り返すと、特定の筋肉が過剰に使われ、疲労が蓄積します。この結果、筋肉が硬直し、筋膜に炎症が生じることがあります。
  3. 運動不足
    運動不足も筋筋膜性腰痛症の原因となります。運動をしないことで、筋肉が弱くなり、少しの負担でも筋肉が疲労しやすくなります。さらに、筋肉の柔軟性が低下し、筋膜の硬化が進むこともあります。
  4. ストレス
    ストレスがかかると、身体が緊張状態に陥り、筋肉が硬くなることがあります。特に腰の筋肉が緊張し続けることで、筋膜に炎症が生じ、痛みが発生することがあります。
  5. 冷え
    冷えによって血行が悪くなると、筋肉や筋膜に十分な酸素や栄養が供給されず、硬直や炎症が起こりやすくなります。これも筋筋膜性腰痛症の一因となります。

筋筋膜性腰痛症の症状

筋筋膜性腰痛症の主な症状は、鈍い痛みや不快感が腰部に持続することです。以下のような特徴があります。

  1. 持続的な鈍痛
    痛みは急性の鋭いものではなく、持続的で鈍い痛みが特徴です。痛みは時間とともに増減することがありますが、完全に消えることは少ないです。
  2. 痛みの場所が特定しにくい
    筋筋膜性腰痛症では、痛みの場所が特定しにくいことが多いです。広範囲にわたって痛みを感じることがあり、時にはお尻や太ももにまで痛みが広がることもあります。
  3. 動作時に痛みが増す
    特に、腰を曲げたり伸ばしたりする動作で痛みが増すことが多いです。また、長時間同じ姿勢でいると痛みが強くなることがあります。
  4. 朝のこわばり
    朝起きたときに、腰が硬く感じることがよくあります。しばらく動かしているうちにこわばりは軽減しますが、完全には解消しないことが多いです。

筋筋膜性腰痛症の診断

筋筋膜性腰痛症の診断は、主に症状と患者の病歴に基づいて行われます。医師は以下のような手順で診断を進めます。

  1. 問診
    患者の症状や痛みの持続時間、痛みが増減する状況などについて詳しく聞きます。また、過去の怪我や病歴、日常生活や仕事での動作についても確認します。
  2. 身体検査
    医師は、腰の筋肉や筋膜の状態を触診し、痛みの原因を特定しようとします。また、腰の可動域や姿勢、筋力なども評価されます。
  3. 画像診断
    必要に応じて、X線やMRIなどの画像診断が行われることもあります。ただし、筋筋膜性腰痛症は画像診断で確認できる明確な異常がないことが多いため、これらの検査は他の原因を除外するために使用されることが一般的です。

このように筋筋膜性腰痛症は診断基準が明確となっているわけではなく、除外しながら診断していくというような方法となります。

筋筋膜性腰痛症の治療法

筋筋膜性腰痛症の治療は、症状の軽減と原因となる筋肉や筋膜の改善を目指して行われます。主な治療法は以下の通りです。

  1. 理学療法であるストレッチや筋力トレーニング、姿勢矯正の指導を通じて、筋肉や筋膜の柔軟性を高め、痛みを軽減します
  2. 生活習慣の改善
    長時間の座り仕事や不適切な姿勢、運動不足などが原因となることが多いため、生活習慣の見直しが必要です。定期的なストレッチやエクササイズ、姿勢の改善が推奨されます。
  3. ストレス管理
    ストレスが筋肉の緊張を引き起こすことがあるため、リラクゼーションやストレス管理の方法を取り入れることも有効です。

予防方法

筋筋膜性腰痛症を予防するためには、日常生活での工夫が大切です。以下のような予防策があります。

  1. 正しい姿勢を保つ
    長時間のデスクワークなどでは、正しい姿勢を保つことが重要です。椅子の高さや背もたれの位置を調整し、腰に負担をかけない姿勢を心がけましょう。
  2. 定期的なストレッチ
    筋肉や筋膜の柔軟性を保つために、定期的にストレッチを行いましょう。特に、腰周りのストレッチを重点的に行うことで、筋筋膜性腰痛症の予防につながります。
  3. 適度な運動を取り入れる
    運動不足は筋筋膜性腰痛症の原因となるため、日常的に適度な運動を取り入れることが大切です。ウォーキングや軽い筋トレなど、無理なく続けられる運動を選びましょう。
  4. 冷えを防ぐ
    冷えによる血行不良が筋筋膜性腰痛症の原因となることがあるため、腰を冷やさないように注意しましょう。冬場には腰を温める衣類や温かい飲み物を取り入れると良いでしょう。

まとめ

筋筋膜性腰痛症は、腰痛の中でも比較的多く見られる症状です。慢性的な鈍痛が続くことが特徴であり、生活の質を低下させる原因となり得ます。しかし、適切な治療や生活習慣の改善によって、症状を改善し、再発を防ぐことが可能です。

予防策としては、正しい姿勢の維持、定期的なストレッチ、適度な運動、冷え対策などが挙げられます。腰痛を感じたら早めに対策を講じ、健康な生活を送るためのケアを心がけましょう。

投稿者プロフィール

井ノ元 宏希
しなやかで軽い体を作る専門店コンディショニング&フィットネススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。知っていることで悩みが解決することもあります。このブログで少しでもお力になれたらと思っています。

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