理学療法士が考えるギックリ腰のケア方法

こんにちは!姫路市飾磨区にあるコンディショニング&フィットネススタジオAlterのHirokiです。

今回はとても身近なギックリ腰についてお話したいと思います。

この間、ギックリ腰になりました。とても痛くて仕事も休みました。今は大丈夫ですが、どうしてあんなことになるんですか?

それは大変でしたね。僕も過去に一度ありますが、動けませんよね。僕の場合は2-3日かかりました。人によって日数も変わりますよね。実は原因は色々あるんです。ギックリ腰はこのように言われています。

一般的に用いられている名称(通称)で、病名や診断名ではありません。痛みの原因はさまざまで、腰の中の動く部分(関節)や軟骨(椎間板)に許容以上の力がかかってけがしたような状態(捻挫、椎間板損傷)、腰を支える筋肉やすじ(腱、靱帯)などの柔らかい組織(軟部組織)の損傷などが多いと考えられます。

日本整形外科学会

これは左が前、右が後ろになる背骨の絵ですが、赤丸が「椎間板」と呼ばれるものです。

青丸は背骨の関節にあたる「椎間関節」となります。

これも同様です。左が前、右が後ろで、後側方からみている絵になります。この赤丸部分は脊柱起立筋といって、背骨を伸ばす時に使う筋肉になります。

この赤丸の筋肉は「多裂筋」と言われ、深いところにある筋肉になります。

この筋肉は関節の膜にも付着しているため、急激に筋肉が引っ張られた際に関節の膜にも影響を出してしまいます。

他にも硬膜や靭帯なども原因の一つと言われています。

病名ではないんですね。それにしても原因はいろいろなんですね。

そうなんです。原因は色々ありますが、割合としては背骨の関節である「椎間関節」や「椎間板」が多いとも言われています。

・田口敏彦.急性腰痛症に対する腰神経後内側枝ブロックの効果の検討.日脊会誌. 1991

兵藤弘訓.いわゆる「ぎっくり腰」は椎間板性疼痛か.日本腰痛会誌.2002

ギックリ腰は急性腰痛症と呼ばれるものになるのですが、注意しないといけない緊急性の高いものも含まれており、①悪性腫瘍②感染③骨折④重篤な神経症状を呈する腰椎疾患(ヘルニアなど)があります。

この①-④の鑑別は最も重要になると「腰痛診療ガイドライン2019」で述べられており、急性の腰痛が緊急性の高いものなのか、そうじゃないかという判断は医師出ないとできないため近くの病院・クリニックで行う必要があります。

ギックリ腰の治癒期間としては90%が6週間以内に自然治癒すると言われていますが、2-7%は慢性的になるとも言われています。(N Eng J Med 1988

ここからは理学療法士として自分が考えるギックリ腰のケア方法についてお話します。過程としては「重篤な腰椎疾患ではなく関節や筋肉、椎間板性であった場合」になります。

安静

まずは安静にしていてズキズキした痛みがある場合は「安静」が大切です。

ガイドライン上では「急性腰痛では安静より活動性維持の方が疼痛軽減と身体機能回復の観点から優っている。しかし、坐骨神経痛を伴う腰痛の場合は安静も活動性維持も明らかな差がなかった」としています。

腰痛診療ガイドライン2019

過度な安静は体に良くないということになりますが、痛みを我慢して生活することとは違います。痛みが我慢できる範囲で動いていくということが大切になります。

適度な運動

急性腰痛に対する運動療法のRCTと呼ばれる論文をまとめたものによると運動療法は無治療群と比べて疼痛改善は差がなかったとする報告がされています。Ann Intern Med 2005

※慢性腰痛に対する運動療法は効果があると報告されています。Acta Clin Croat 2013

しかし、臨床上では負担のかかっている関節とは別の関節で動きが悪い場合が多く、そうなると負担のかかっている関節はいつまでも負担のかかったままとなってしまいます。

傷んでしまった部分は安静で良いと思いますが、そのほかの部分は可能な範囲で可動性を出したり、固定性アップのためのトレーニングなどが適宜必要になります。

可動性のある関節、固定性が中心の関節や、負荷ストレスは他に移行してしまうといった理論はjoint by joint theoryと呼ばれています。

胸椎・股関節の柔軟性向上

先ほどのjoint by joint theoryという理論からすると、隣接関節の可動性が悪くなることで、腰自体に負担がかかってしまいます。

この理論はアメリカのストレングス&コンディショニングコーチのMichael Boyle

理学療法士であるGrey Cockによって提唱された理論となります。

それぞれ本が出ています。

Grey Cook Movement

Michael Boyle Functional training for sports

この理論は、身体にある関節には『動く関節』と『安定させる関節』があるとされていて、動く関節が硬くなることで、安定させる関節が過剰に動いてしまい、痛みを引き起こすといった機序で負担をかけてしまいます。

赤丸が動くために作られている関節

青丸が固定するための関節

それぞれに役割がありますが、この役割がバラバラになってしまうことがあります。

この理論からすると、腰の関節の上下には胸椎と股関節がありますが、いずれも動くために作られている関節です。ここが硬くなっている方は多いです。

この関節の柔軟性向上を目指してストレッチやエクササイズをしましょう。

インスタグラムで体操をいくつか紹介しています。

体幹筋のトレーニング

先ほどのjoint by joint theoryから考えて、腰は「固定されるべき関節」です。

関節では固定性が弱いため、筋肉を使って固定性を上げていきます。

体幹トレーニングですよね。ただ腹筋ではなくて、体幹部を固定した状態での四肢運動などが必要な動作になるためトレーニング方法としては静的な体幹トレーニングが有効的です。

このトレーニング方法もインスタグラムで紹介しています。

体を冷やさない

体を冷やすということは血流が悪くなるということにつながってきます。血流が悪いと、筋肉への血行が悪くなるために筋肉が張りやすくなってしまいます。

筋肉に柔軟性がなくなると関節の膜を引っ張る力が強くなったり、筋肉と腱との移行部で負担がかかったりするなど、怪我の原因につながります。なるべく体全体を冷やさないようにしましょう。

以上、僕自身の考えるケア方法についてまとめました。

一番良いのは専門家に体の状態をみてもらうことだと思います。

原因が変わればアプローチ方法も変わります。

ギックリ腰の4割は半年以内に再発すると言われています。再発しないように今のうちから対処していきましょう。

投稿者プロフィール

井ノ元 宏希
しなやかで軽い体を作る専門店コンディショニング&フィットネススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。知っていることで悩みが解決することもあります。このブログで少しでもお力になれたらと思っています。