ランナー膝とそれに対するケア方法

マラソンをしているんですが、膝の外側がよく痛くなるんです。病院では「ランナー膝」と言われたのですが、どのようなものなのですか?これって治りますか?

マラソン良いですね。僕も過去に2回完走したことがありますが、大変ですよね。「ランナー膝」は名前の通りランナーの方に多いとされています。どういったものなのか、ケア方法も含めて解説しますね。

ランナー膝とは

別名、腸脛靭帯炎と言います。

赤丸のついている部分に痛みが出ることが多く、初期症状は運動中や運動後の痛みがありますが、安静にしていると痛みが消えます。しかし、症状が悪化すると、歩行時や安静時にも赤丸部分に痛みを感じるようになります。

メカニズムとしては大腿骨という太ももの骨の形状がこの部分で膨隆しています。この膨隆部分に太ももの外側にある靭帯がたびたび擦れることで炎症を起こしてしまう病態となります。膝の曲げ伸ばしで靭帯が膨隆部分を越えるために曲げ伸ばしの多いマラソンで起きやすくなっています。他には自転車競技をされている方も多いと言われています。

ランナー膝の有病率・なりやすい人

あるランナーの方を対象にした調査ではランナーのうち、膝に痛みや不安を感じる人は80%と回答しています。そのうち、膝外側部に症状のある方は23%と割合としては一番多い結果となっています。

また自転車競技者の15〜24%で発生しているとも言われています。

ランナー膝の診断方法

膝外側の圧痛、運動時痛を確認します。

症状の誘発方法(徒手検査法)として、膝を90度屈曲して外顆部で腸脛靱帯を押さえてから膝を伸展していくと、疼痛が誘発されるgrasping test(グラスピングテスト)が有用となっています。
レントゲンやMRIでは特徴的な所見はありませんが、骨折や半月板損傷などの鑑別診断に検査をすることがあります。

ランナー膝の一般的な治療方法

一般的な治療方法は以下のようになります。

  1. 休息と活動の制限: 痛みが強い場合は、ランニングや他の膝に負担をかける活動を一時中止することが重要です。痛みが軽度の場合でも、炎症を遷延化させてしまうと、新たな血管新生などが進んでしまい、痛みが取れにくくなる恐れもあります。無理をせずに症状のある場合は安静が推奨されます。
  2. アイシング: 炎症を和らげるために、痛んだ膝を氷で冷やすことが有効です。20分ごとに数回行うと効果的です。
  3. 薬物療法: 痛みや炎症を軽減するために、医師の指示に従って非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や痛み止めを服用することがあります。これは対症療法となるため、注意も必要です。痛み止めを飲みながら競技するのではなく、ランナー膝の原因となった筋肉のバランスなどに対処するようにしましょう。
  4. 筋力トレーニング: 膝周りの筋肉を強化することで、膝にかかる負担を減らすことができます。特に大腿四頭筋やハムストリングス、ヒラメ筋を強化するエクササイズが効果的です。
  5. ストレッチング: 筋肉や靭帯を柔軟に保つためのストレッチングが重要です。特に大腿四頭筋やハムストリングス(太ももに裏にある筋肉)、腸脛靭帯のストレッチが役立ちます。
  6. ランニングフォームの改善: 適切なランニングフォームや足の着地方法を身につけることで、膝への負担を軽減できます。専門家の助言を受けることが有益です。
  7. 装具の使用: 適切な装具やサポート具を使うことで、膝の安定性を高めることができます。例えば、膝サポーターやテープを使用することで症状の軽減が期待できます。

ランナー膝の報告では保存療法といって、手術ではなく上記のような治療方法によって80%の方が治っていくとも言われています。

理学療法士が考えるランナー膝に対するケア方法

安静

まずは安静が大切です。腸脛靭帯の炎症が続くことで異常な血管が増えてきてしまいます。血管が増えるということは神経も発達してくるために痛みの反応が強くなったり、痛みが引かなくなるなど、慢性的な痛みに続いてしまう可能性があります。炎症が起きているときは、その部分に負担のかからないように局所的に安静にすることが大切になります。

ストレッチ

腸脛靭帯が硬くなっていることで大腿骨の傍流部で摩擦が起きてしまいます。腸脛靭帯(大腿筋膜張筋)のストレッチをご紹介します。

  1. まず真っ直ぐ立ちます。
  2. 伸ばしたい側の足を後ろに引いた後に反対側の足の後ろを通って交差するようにしましょう
  3. 交差させたまま、伸ばしたい方に骨盤を横移動させて下さい
  4. 太ももの外側が突っ張ればOKです

股関節や体幹のトレーニング

一般的には膝周りとも言われていますが、お尻の筋肉が使えていない、弱っている方は多いです。お尻の筋肉が使えないことで大腿筋膜張筋という筋肉が過剰に力を入れてしまいます。大腿筋膜張筋は腸脛靭帯についているので、筋肉の硬さがそのまま腸脛靭帯の硬さに繋がってしまいます。お尻の筋肉を鍛えることで膝周辺の筋肉に負担をかけないようにしましょう。

体幹筋も同様ですが、体幹筋の固定性が低下することで膝への負担も増えます。

実際に股関節外転筋や体幹筋(特に内腹斜筋)の低下がスポーツにおける下肢障害発生率に影響するといった報告もされています。体幹筋、股関節周囲の筋トレ見直してみましょう。

分かりにくい場合はインスタグラムでも紹介しています。

一度覗いてみて下さい。

もしかすると靴!?

ランナー膝はO脚で発生しやすいとも言われています。O脚になるということは外側を走る腸脛靭帯は、より張ってしまいます。O脚の改善も大事ですが、極端に踵の外側が擦り減った靴を履いていると、靴の形状からO脚になってしまう可能性があります。

走っている時に毎回外側の方へ体重が移動してしまうと膝への負担は強くなります。定期的に靴の見直しをしてみて下さい。

以上がケア方法になります。腸脛靭帯が張っているといっても、張っている原因はさまざまです。

体幹が弱いのか、股関節が弱いのか、足部の硬さが原因なのか、靴なのか、、

その人、その人によってケア方法は変わるため、原因の原因を治していきたいとなると専門家にみてもらうことが大切になります。

マラソンは本当に素敵なスポーツだと思います。マラソンを続けられるように我慢せず早めの相談してみて下さい。

投稿者プロフィール

井ノ元 宏希
しなやかで軽い体を作る専門店コンディショニング&フィットネススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。知っていることで悩みが解決することもあります。このブログで少しでもお力になれたらと思っています。