理学療法士が考える五十肩のケア方法

こんにちは!姫路市飾磨区にあるコンディショニング&フィットネススタジオAlterのHirokiです。

寒くなってきましたよね。怪我の多い時期になるので気をつけて下さい。

本日は五十肩についてお話したいと思います。

五十肩とは

五十肩は、肩関節周囲炎といって、肩周辺の痛みや運動制限を引き起こす状態の言葉となります。五十肩は学術的な名称ではなく、主に50歳以上の人々に見られることからこの名前がついていますが、年齢に限らず若い世代でも発症することがあります。四十肩や癒着性肩関節包炎、凍結肩とも言われたりします。

現在では「凍結肩」といて各種学会も使用するようになっています。

医学的に少し詳しく説明すると、肩関節周囲の組織が炎症を起こすことで、一部の組織が肥厚するとも言われています。この組織肥厚が肩関節の制限を起こすとも言われており、肥厚が薄くなる(この部分に関しては明確な研究結果は出ていません。可動域が軽減していく病態生理は、はっきりと解明されていません)のに時間を要するとも言われています。

五十肩の症状

肩関節の周辺にはかなりたくさんの組織があります。どの組織も痛みを感じるセンサーを持っているため、どこの組織が炎症を起こしていても痛みや運動制限の原因となります。

症状としては

  1. 痛み: 殆どの場合、肩の周囲で痛みが起こります。特に初期は夜間や安静時に痛みが強くなることがあります。
  2. 運動制限: 肩の可動域が制限され、特に肩を持ち上げたり後ろに動かしたりする動作が難しくなることがあります。肩の制限が強い方は日常生活に支障が出る程度とも言われたりしています。

段階として3つに分かれることが一般的とされています。

炎症期は2~9カ月、拘縮期が3~12カ月、発症から回復まで6カ月~2年を要するのも理解できる。

  1. 凍結前期(炎症期): 症状が最初に現れる段階で、肩の痛みが強く、特に夜間や動かす際に感じられます。可動域が制限され始め、肩の動きが制限されることが特徴です。この段階は数週間から9カ月程度続くとも言われています。
  2. 凍結期: 痛みのピークが過ぎた後、肩の動きがますます制限される段階です。痛みは以前よりも少なくなることがありますが、肩の可動域は制限されたままで、日常生活や活動が制約されることがあります。この段階は3カ月から12ヶ月続くとも言われています。
  3. 解凍期: 症状が徐々に改善し、肩の可動域が回復する段階です。痛みは軽減し、肩の動きが向上していきます。この段階は6か月から2年程度かかるとも言われているぐらい治癒に大変時間がかかります。

このような段階を辿るため「凍結肩」と呼ばれたりもします。しかし、予後に関しては次のところでも紹介しますが、何らかの制限が残ってしまうことも多く報告されています。

五十肩の予後

凍結肩の予後に関する先行研究によると、発症後4年の経過で60%以上、7年の経過観察でも50%に何らかの痛みや肩関節の可動域制限が残存するとされ、凍結肩が自然治癒するとも言えず、「凍結肩は自然治癒するから心配ない」という説明は正しくありません。

五十肩の頻度

発症頻度は人口の2〜5%と言われていますが、糖尿病を合併すると13%に増加すると報告もあります。

凍結肩の同側肩での再発はあまりありませんが、罹患後4年以内に反対側の肩に凍結肩を発症する確率は20%に達するとも言われています。

糖尿病、甲状腺機能亢進・低下症、乳癌、胸郭腫瘍、腎不全による透析があると凍結肩を発症する確率はさらに高まるとも言われています。

五十肩の診断

色々な検査を実施して決めますが、五十肩という医学的用語はなく、凍結肩や肩関節周囲炎といった病名はあります。

ちなみに凍結肩となると

①明らかな原因がない

②肩関節の自動・他動可動域制限

 自分で動かそうとしても他人に動かしてもらっても関節の制限があることです。

③腱板断裂などの肩関節内病変を有しない

この3条件を満たす症例を「凍結肩」と診断されるようになっています。

五十肩の治療方法

凍結肩(五十肩)の治療方法は、症状の重症度や個々の状況に応じて異なります。一般的に、以下のような治療法が用いられます:

  1. 薬物療法: 医師から処方された非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や痛みを軽減するための鎮痛薬を使用することがあります。これらの薬物は炎症を抑えたり、痛みを和らげる効果が期待されます。
  2. 理学療法: 理学療法士による特定のエクササイズやストレッチ、肩関節の動きを改善するための運動療法が行われます。これにより筋力を強化し、可動域を広げることが目指されます。
  3. ステロイド注射: 炎症を抑えるために肩関節にステロイド注射を行う場合があります。これは痛みや腫れを緩和する効果が期待されますが、長期的効果は不明ともされています。
  4. マニピュレーション: 医師によって行われるものですが、局所的な麻酔をかけた状態で肥厚した関節包を断裂させる手技でとなります。マニピュレーション後、数日で疼痛と関節可動域が改善し、長期成績も良好ですが、リハビリの継続は必要です。
  5. 温熱療法: 痛みを和らげるために、温熱療法(温めることによる血行促進)が行われることがあります。
  6. 手術: 重度の五十肩に対しては手術が必要な場合がありますが、通常は保守的な治療法での改善が期待されます。マニピュレーションの成績と比較したシステマティックレビューでは、鏡視下手術の外転と外旋の可動域改善度が大きく、機能評価スコアではマニピュレーションより12%点数が高かったとされています。

最近ではハイドロリリースといって、硬くなった部分に対して生理食塩水を注射針で注入することで、癒着した組織を剥がしていくような治療が出てきたりもしています。

理学療法士が考える五十肩のケア方法

ここからは理学療法士として考えている五十肩のケア方法について説明していきます。

痛い時は無理をしない

これはとても大切なことです。痛みというのは体の信号になります。どこかに負担がかかっているので、痛みとしての信号を受け取ります。

痛みが出るということは炎症を助長させてしまうことにもなりますし、交感神経が活性化してしまいます。交感神経の活性化によって血管を収縮させるため局所の血流が乏しくなる恐れがあります。炎症にしても交感神経の活性化にしても組織肥厚を助長させる動きになってしまうため注意が必要です。鎮痛薬によって負担がかかっていると分かりにくい場合もあるため注意が必要です。

肩甲骨周囲の柔軟性を出す

肩関節といっても、いわゆる肩の動きもあれば1/3程度は肩甲骨が動いています。

肩甲骨の動きが悪くなることで、肩関節が過剰に動いてしまい、肩関節周囲の組織に負担をかけるといったことになります。

肩こりのある人や肩甲骨の動きが硬いなって思う人は注意が必要です。

肩甲骨周囲のストレッチやエクササイズしてみて下さい。

※一旦炎症期に入るとストレッチをしようと思っても痛過ぎて行うことができません。その場合は、痛みのない範囲で肩甲骨や肩を動かすようにしましょう。

ストレッチや体操方法に関しては随時さまざまな体操をインスタグラムで動画付き解説していきます。

一度確認してみて下さい。

Alter公式のインスタグラム

姿勢が大事

この姿勢という問題は前述した「肩甲骨」の動きに関与してきます。例えば首が前に出ているようなスマホ首と言われるものは僧帽筋の筋肉が凝りやすい姿勢となっています。

僧帽筋は肩甲骨についているため、僧帽筋が硬くなってしまうと肩甲骨の動きが悪くなります。

あとは前述でもあるように肩関節に負担がかかってきてしまいます。

姿勢は注意するようにしましょう。

硬くなった場合は専門家にみてもらう

硬くなってしまった場合は、自分ではどうにかすることは難しくなります。理学療法士という運動やリハビリの専門家のいる病院やクリニックでリハビリを受けるようにして下さい。

我流でのエクササイズは肩関節の制限を助長する可能性もあります。

以上簡単ではありますが、五十肩についてのお話をさせて頂きました。五十肩と言っても傷めている組織はさまざまなため、理学療法を行う際は人によってプログラムが大きく変わります。できれば専門の方にみてもらうことが治癒の近道だと思います。

投稿者プロフィール

井ノ元 宏希
しなやかで軽い体を作る専門店コンディショニング&フィットネススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。知っていることで悩みが解決することもあります。このブログで少しでもお力になれたらと思っています。