ピラティスで鍛える「インナーマッスル」って何?
「ピラティス」と聞いて、まず頭に浮かぶのは「体幹」や「インナーマッスル」という言葉ではないでしょうか。多くの人が「インナーマッスルを鍛えたい!」とピラティスを始める一方で、実際に「インナーマッスルって具体的に何を指すの?」「なぜそんなに重要だとされているの?」という疑問を持っている方も少なくないはずです。
このブログでは、そんな疑問を解消し、ピラティスでなぜインナーマッスルが重要視されるのか、そしてそれらを鍛えることであなたの体にどんな変化が訪れるのかを、分かりやすく解説していきます。
1. 「インナーマッスル」と「アウターマッスル」の違いとは?
まず、よく聞く「インナーマッスル」と「アウターマッスル」の違いから明確にしましょう。
人間の体には、約600もの筋肉が存在すると言われています。これらの筋肉は、その場所や役割によって大きく2つのタイプに分けられます。
- アウターマッスル(表層筋):
- 特徴: 体の表面に近い部分に位置し、比較的大きく、目で見たり触ったりしやすい筋肉です。
- 役割: 主に大きな力を発揮し、関節を大きく動かすことに特化しています。例えば、上腕二頭筋(力こぶ)、大腿四頭筋(太ももの前)、腹直筋(お腹のシックスパック)などがこれにあたります。
- 得意な動き: 重量挙げや短距離走のように、瞬発的な力や大きな動きを伴う運動で活躍します。
- インナーマッスル(深層筋):
- 特徴: 体の奥深く、骨や関節に近い部分に位置する小さな筋肉が多いです。触りにくく、意識して動かすのが難しいと感じることもあります。
- 役割: 主に関節の安定化、姿勢の維持、そして微細な動きの調整を担います。特定の関節を特定の位置に安定させながら、他の部分を動かすといった、繊細で持続的な働きが得意です。
- 得意な動き: 姿勢を長時間保つ、バランスを取る、呼吸を深く行うといった、地味ながらも非常に重要な役割を担っています。
イメージとしては、アウターマッスルが「大きな扉を勢いよく開ける力持ち」だとすれば、インナーマッスルは「その扉の蝶番(ちょうつがい)をしっかりと固定し、スムーズな開閉を支える緻密な職人」といったところでしょうか。
2. ピラティスで鍛える「インナーマッスル」の正体:特に重要な「コアユニット」
ピラティスで特に重要視されるインナーマッスルは、体幹の安定性を司る「コアユニット」と呼ばれる主要な4つの筋肉(またはグループ)です。これらが連動して働くことで、まるで天然のコルセットのように体幹を安定させ、手足の動きを効率化し、姿勢を正しく保つことができます。
- 腹横筋(Transversus Abdominis):
- どこにある? お腹の一番深層にある筋肉で、肋骨の下から骨盤までを水平に包み込むようについています。
- どんな役割? お腹周りをコルセットのように締め付け、腹腔内圧を高めることで、体幹を強力に安定させます。内臓を正しい位置に保つ働きも。
- ピラティスでは? 呼吸と連動させて意識的に収縮させることで、体幹の安定性を高める全ての動きの「土台」となります。
- 多裂筋(Multifidus):
- どこにある? 背骨の椎骨と椎骨の間、非常に深層にある小さな筋肉群です。
- どんな役割? 一つ一つの椎骨を安定させ、背骨の生理的なS字カーブを維持します。脊柱の安定化に不可欠。
- ピラティスでは? 背骨を一つ一つ丁寧に動かす「アーティキュレーション」を意識したエクササイズで、これらの筋肉のコントロールを養います。
- 骨盤底筋群(Pelvic Floor Muscles):
- どこにある? 骨盤の底にハンモックのように張り巡らされた筋肉群です。
- どんな役割? 内臓を支え、排泄のコントロール(尿漏れ予防など)、そして体幹の安定化に貢献します。
- ピラティスでは? 呼吸や腹横筋の活性化と連動させて、骨盤底筋群を意識的に引き上げるエクササイズを行うことで、コアユニット全体の機能が高まります。産後のケアや尿漏れ予防にも重要です。
- 横隔膜(Diaphragm):
- どこにある? 胸腔と腹腔を隔てるドーム状の大きな筋肉で、呼吸の主役です。
- どんな役割? 息を吸うときに収縮して下に下がり、肺に空気を取り込みます。息を吐くときは弛緩して上がり、空気を押し出します。呼吸と腹腔内圧の調整を通じて、体幹の安定性に大きく寄与します。
- ピラティスでは? 常に呼吸と動きを連動させるため、横隔膜を意識的に使うことで、コアユニット全体の連携を深めます。
これらの筋肉が単独で働くのではなく、協調して働くことで、私たちの体は安定し、効率的に動くことができるのです。
3. なぜインナーマッスルが現代人に必要なのか?
現代のライフスタイルは、残念ながらインナーマッスルを弱らせる要因に満ちています。
- 長時間の座り仕事: デスクワークやスマートフォンの使用により、体を大きく動かす機会が減り、体幹が使われにくくなります。猫背や仙骨座りなどの不良姿勢は、インナーマッスルが働きにくい状態を作り出します。
- アウターマッスル優位の運動: ジムでのトレーニングやスポーツで、アウターマッスルばかりを酷使していると、インナーマッスルが「サボる」ようになり、筋バランスが崩れやすくなります。重い負荷をかけると、体が無意識に大きな力を出せるアウターマッスルに頼る「代償動作」が生じやすいため、狙った効果が得られにくいことがあります。
- ストレスと浅い呼吸: ストレスや緊張は呼吸を浅くし、横隔膜の適切な動きを阻害します。これにより、コアユニット全体の機能が低下します。
インナーマッスルが弱まると、体幹の安定性が失われ、以下のような様々な体の不調や問題を引き起こす可能性があります。
- 姿勢の悪化(猫背、反り腰など)
- 慢性的な腰痛や肩こり
- 股関節や膝関節への負担増、痛み
- 尿漏れや便秘
- 呼吸が浅くなる、疲れやすい
- 運動パフォーマンスの低下
- 怪我のリスク増大
4. ピラティスがインナーマッスルを効果的に鍛える理由
ピラティスは、考案者ジョセフ・ピラティスが「コントロロジー(制御学)」と名付けた通り、体をコントロールすることに焦点を当てたエクササイズです。インナーマッスルを鍛える上で、ピラティスが非常に効果的なのには明確な理由があります。
- 「呼吸」との徹底的な連動:
- ピラティスでは、全ての動きを深呼吸(特に呼気)と連動させます。息を吐きながら腹横筋や骨盤底筋群を意識的に収縮させることで、これらのインナーマッスルが効果的に活性化されます。
- 横隔膜の適切な動きも促されるため、呼吸器系の機能向上にも繋がります。
- 「正確性」と「意識の集中」:
- ピラティスのエクササイズは、一つ一つの動きの「質」と「正確性」を非常に重視します。速さや回数よりも、いかに目的の筋肉を意識し、コントロールして動かすかが重要です。
- これにより、普段意識しにくいインナーマッスルへの神経伝達が向上し、「自分の意思で動かす」感覚を養うことができます。
- しっかり筋肉が使えているかどうかは動きを細かく見ることも重要ですが、実際に筋肉がしっかり収縮しているか筋肉をチェックする触診技術も重要になります。Alterではスタッフ全員が医療機関での勤務経験を持ち、触診技術に長けています。狙った筋肉がしっかり働いているか適宜確認していきます。
- 「低負荷」からのスタートと段階的な負荷調整:
- ピラティスは、まず自重や軽い負荷から始め、アウターマッスルの代償を使わずにインナーマッスルを確実に働かせることを目指します。
- 熟練度に合わせて、マシン(リフォーマー、キャデラックなど)の抵抗を調整したり、より複雑な動きを導入したりすることで、安全かつ効果的にインナーマッスルを強化していきます。
- 先述の「サイズの原理」に基づき、軽い負荷でインナーマッスル(遅筋繊維の多い小さい運動単位)を優先的に動員するため、アウターマッスルばかりが発達するのを防ぎます。
- 「流れるような動き」と「統合された動き」:
- ピラティスは、単一の筋肉を鍛えるだけでなく、全身の筋肉を協調させて流れるように動かすことを目指します。
- これにより、インナーマッスルが安定化の役割を担いながら、アウターマッスルがスムーズに動きを生成するといった、理想的な運動パターンを身につけることができます。
5. インナーマッスルを鍛えることで得られる体の変化
ピラティスを通じてインナーマッスルが強化されると、あなたの体には様々なポジティブな変化が訪れます。
- 美しい姿勢の改善:
- 体幹が安定することで、猫背や反り腰などの不良姿勢が改善され、背筋が伸びた本来の美しい姿勢を取り戻せます。
- 自然と重心が整い、立ち姿や歩き方が洗練されます。
- 腰痛・肩こりの緩和と予防:
- インナーマッスルが体幹をしっかりと支えることで、腰や肩への負担が軽減され、慢性的な痛みの緩和や予防に繋がります。
- 特に、腰痛の多くはインナーマッスルの機能不全が原因であると言われています。
- ボディラインの引き締め:
- 腹横筋が活性化されることで、お腹周りが内側から引き締まり、ウエストのくびれがより鮮明になります。
- 内臓が正しい位置に収まりやすくなるため、ポッコリお腹の改善にも効果的です。
- 運動パフォーマンスの向上:
- スポーツや日常動作において、体幹が安定することで手足の動きが効率化され、より大きな力やスピードを発揮できるようになります。
- 怪我の予防にも繋がり、安全に運動を楽しめるようになります。
- 自律神経の安定と精神的な落ち着き:
- 深い呼吸を意識することで、自律神経のバランスが整い、リラックス効果やストレス軽減にも繋がります。
- 自分の体と向き合い、集中することで、心の落ち着きも得られます。
- 疲れにくい体へ:
- 体の使い方が効率的になるため、無駄な力みが減り、日常の動作での疲労感が軽減されます。
6. まとめ:あなたの体を変える「インナーマッスル革命」をピラティスで!
インナーマッスルは、私たちの体の土台であり、健康な体と美しい姿勢を保つ上で不可欠な存在です。しかし、現代の生活習慣では意識しないと衰えやすい筋肉でもあります。
ピラティスは、このインナーマッスルを呼吸、正確性、意識の集中を通じて効果的に鍛え上げ、体幹の安定性を高めることに特化したエクササイズです。単に筋肉を大きくするだけでなく、体の内側から整え、バランスの取れた機能的な体へと導いてくれます。
もしあなたが、
- 長年の腰痛や肩こりに悩んでいる
- 姿勢の悪さが気になる
- ポッコリお腹をどうにかしたい
- 運動パフォーマンスを向上させたい
- 疲れにくい体を手に入れたい
と感じているなら、ぜひピラティスを始めてみてください。熟練したインストラクターの指導のもと、あなたの眠っているインナーマッスルを目覚めさせ、「体が変わる」という感動を体験できるはずです。
正しいインナーマッスルの使い方を習得し、より快適で活動的な毎日を手に入れましょう。
姫路市飾磨区にあるコンディショニング&ピラティススタジオAlterでは国家資格保有者が適切な評価をもとに整体&ピラティスを行うことで健康的な体を作るサポートをするスタジオです。
体のことで悩んでいる方などご相談もしくは体験に来てみてください。

コンディショニング&ピラティススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。論文執筆経験あり。関節ファシリテーションや運動器エコー、ピラティスなどを学んでおり体について悩んでいる人を運動療法で救っていきたいと思っています。