盲人と像のお話
今回は、私自身が日頃から気をつけていることについてお話ししたいと思います。これを意識し始めたのは、私が理学療法士になり、医学の道に進んだときからです。多くのことに気を配ってきましたが、特に意識しているのは「視野を狭めないこと」です。
突然ですが、「盲人と象」の話をご存知でしょうか?この寓話は、限られた視点だけで物事を判断することの危険性を教えてくれる話です。
盲人と象
ある村に目の見えない数人の盲人がいました。彼らは象がどのような動物か知らなかったため、ある日、象を知るためにそれぞれが象に触れてみました。しかし、彼らが触れたのは象の異なる部分でした。
象の脚に触れた盲人は「象とはまるで柱のようだ」と言い、鼻に触れた盲人は「象とは太い蛇のようだ」と言いました。耳に触れた盲人は「象とは大きな扇のようだ」、胴体に触れた盲人は「象とは大きな壁のようだ」と言い、尾に触れた盲人は「象とは細いロープのようだ」と言いました。盲人たちはそれぞれが象の一部分だけを知っているために、象全体を理解することはできませんでした。
この話の教訓は、部分的な情報に基づいて全体を判断すると誤解が生じるということです。異なる視点を持つことが大切であり、さまざまな視点を取り入れることで真実や全体像を理解できるという教えです。
深い穴を掘るためには周りも掘る必要がある
よく「専門性に特化しなければならない」と言われますが、私は専門性を深めるためには周辺の知識や技術も学ぶ必要があると感じています。これは、深い穴を掘るためには周りも一緒に掘らないといけないことに似ています。一見、関係ない分野に見えるものでも、実際には関連があり、新たな発見につながることがあります。そのため、私は視野を広げることを常に意識しています。
とはいえ、視野を広げることには弊害もあります。
視野を広げることの弊害
視野を広げることで起こる可能性のある弊害としては、以下の点が挙げられます。
- 情報過多: 多くの情報を取り入れると、重要な情報を見逃したり、情報に圧倒されて判断が難しくなることがあります。これに対する対策としては、情報を整理し、信頼できる情報源を選ぶことが重要です。
- 優柔不断: 選択肢が多いと、どれを選べばよいか迷いやすくなります。この問題に対処するためには、明確な目標や基準を持ち、優先順位をつけて判断する練習が必要です。
- 一貫性の欠如: 多様な視点を持つことで、一貫性のない行動や決定をしてしまうことがあるかもしれません。これを防ぐためには、自分の価値観や基本的な原則を明確にし、それに基づいて行動することが大切です。
- 疲労やストレス: 新しい情報や視点を常に取り入れることで、精神的な疲労やストレスが増えることがあります。これに対処するためには、情報のインプットとアウトプットのバランスを取り、リラックスする時間を確保することが重要です。
- 時間の浪費: 重要でない情報や視点に時間を費やすことがあるかもしれません。この問題に対しては、自分にとって本当に必要な情報や視点を見極めるスキルを養うことが必要です。
私自身も、視野を広げることの弊害を感じることがあります。特に「情報過多」による影響が大きく、知識や技術を学びたいと思っても時間が足りないことがよくあります。この課題に対して、まだ完全な解決策は見つかっていませんが、私は自分で「視野を狭めない」と決めたので、この問題とは一生向き合っていくつもりです。
もちろん、一つのことに集中することで効率が上がることもありますが、私は、たった一つの視点では解決できない問題がたくさんあると感じています。対策として、常に自分の基準や優先順位を意識し、見極める力を養いながら、これからも視野を広げていろいろなことを学んでいきたいと思っています。
今回の記事では、私が理学療法士になってから常に気をつけてきたことについて書いてみました。これからも日々学びを深め、精進していきます。
コンディショニング&フィットネススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。論文執筆経験あり。関節ファシリテーションや運動器エコー、ピラティスなどを学んでおり体について悩んでいる人を運動療法で救っていきたいと思っています。