ピラティスにおける呼吸法:解剖学と運動学から見た腹式呼吸と胸式呼吸の違い

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ピラティスを実践する際、呼吸は単なる体に空気を送り込む行為以上の重要な役割を担います。ピラティスでは一般的に胸式呼吸でと言われており、これはヨガにおける腹式呼吸とは異なるアプローチです。解剖学的および運動学的な観点から、これらの呼吸法が体にどのように作用するのか、そしてどのように体幹をサポートするのかについて深掘りしていきます。

腹式呼吸と胸式呼吸の解剖学的違い

腹式呼吸(横隔膜呼吸)は、息を吸うことで横隔膜が下がり、腹部が膨らむ動きです。この呼吸法は、主に横隔膜の動きに依存しており、横隔膜が下がることで胸腔内の圧力が低下し、肺に空気を取り込みやすくします。同時に、腹部の筋肉(腹直筋、腹斜筋、腹横筋)がリラックスし、膨らんでいきます。

一方、胸式呼吸は、胸郭を広げて肺の上部に空気を取り込む方法です。これは、胸部の筋肉や肩甲帯、肋間筋などが働き、横隔膜の動きは抑えられます。胸式呼吸では、肋骨が横に広がり、肺が上部に向かって膨らむため、腹部は膨らまず、むしろ体幹部が安定している必要があります。

ピラティスにおいては、胸式呼吸が主に使われる理由は、体幹を安定させることにあります。腹式呼吸を行うとき、腹部が膨らんでしまうため、ピラティスのエクササイズで求められるコアの安定性が損なわれる可能性があります。これに対して、胸式呼吸では体幹部に力を入れたまま、上半身の拡張を促進できるため、ピラティスの動きに適しています。

実際に実験してみましょう!

下の写真のような姿勢をとってみましょう。その後、お尻を天井に向けて少し浮かせてください。

お腹の方にしっかり力が入るかと思います。

その状態を維持したままゆっくり呼吸をしてみましょう。

息を吸うときにお腹が膨らみましたか?おそらく胸のほうが膨らんだのではないかと思います。

お腹にしっかり力が入っている状態だと胸や背中がしっかり膨らみます。

これがピラティスで言われている胸式呼吸ということになります。

運動学的な観点から見る体幹と呼吸の関係

ピラティスのエクササイズは、体幹部の安定性と柔軟性を高めることを目的としています。このため、腹部や背中の深層筋(特に腹横筋や多裂筋)を強化することが中心となります。これらの筋肉は、脊椎を安定させ、骨盤の動きをコントロールするために重要です。

腹式呼吸を行うと、腹部が膨らみ、横隔膜が下がることにより、体幹の深層筋がリラックスしやすくなります。そのため、体幹部の安定性が損なわれ、力を発揮するのが難しくなることがあります。

一方、胸式呼吸では、肋骨が広がることで肩甲骨や背中の筋肉が活性化され、胸郭と体幹が強化されます。これにより、体幹部の筋肉が適切に働き、ピラティスの動きに必要な「コアの安定性」を保ちながら、上半身を柔軟に使うことが可能になります。ピラティスにおける呼吸法は、体幹部の筋肉に意識的に力を入れつつ、胸部を拡張するための方法として胸式呼吸が重視されるのです。

ピラティスにおける呼吸と力の入れ方

ピラティスでは、呼吸と体幹の力を連動させることが求められます。エクササイズを行う際、体幹をしっかりと固め、動きの中で力が分散しないようにすることが重要です。腹式呼吸では、体幹の筋肉を使うよりもお腹の膨張を意識しがちで、体幹の深層筋があまり使われません。これに対して、胸式呼吸では、胸郭を拡張し、肋骨を引き上げる動きが加わるため、体幹部(特に腹横筋や多裂筋)が安定しやすくなります

また、ピラティスの多くのエクササイズは、**「呼吸で力を引き出す」**という原則に基づいています。たとえば、呼吸を吐く際に腹部を引き締め、力を込めることでコアを固めながら動くことができ、エクササイズの効果を最大化できます。胸式呼吸を使うことで、この動きがよりスムーズに、かつ効果的に行えるのです。

ピラティスとヨガの呼吸法の違い

ピラティスとヨガの呼吸法には大きな違いがあります。ヨガでは、腹式呼吸を強調し、リラックスした状態で深い呼吸を行いながら、身体全体の柔軟性を高めていきます。腹式呼吸はリラックス効果を高め、体の緊張をほぐすため、静的な動きに適しています。

一方、ピラティスは、体幹部の強化と安定性を重視しているため、動的なエクササイズの中で胸式呼吸を用いることが多いです。胸式呼吸により、体幹の筋肉を意識的に使いながら、上半身の柔軟性を保つことができます。

まとめ

ピラティスにおける呼吸法は、解剖学的にも運動学的にも重要な役割を果たしています。腹式呼吸は、リラックスした状態で使われる一方、ピラティスでは胸式呼吸を使うことで体幹部の安定性を保ちながら、上半身の柔軟性を高めることができます。呼吸法を意識的に使い分けることで、ピラティスのエクササイズの効果を最大化し、より深いコアの強化と柔軟性の向上を図ることができるのです。

ピラティスの練習では、正しい呼吸法を身につけ、体幹をしっかりとサポートしながら動くことで、より効果的にトレーニングを行うことができます。


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