癒着は身近に起きるもの
最近色々なところで耳にする「筋膜リリース」
筋膜を解放するというような意味ですが、
これは簡単にいうと、筋膜や筋膜と周りの組織で癒着を起こした部分を戻していくという作業になります
今回はこの「筋膜リリース」ではなくて、筋膜リリースをしないといけなくなってしまった原因である「癒着」についてお話したいと思います
癒着とは
本来離れているべき組織同士が炎症により、臓器、組織面がくっついてしまうこと。
Wikipedia
とあります
よく聞く場面では、「お腹の手術の時に腹膜と腸が癒着してしまって腸の動きが悪くなる」や、「手術所見で前回の手術部分が癒着していた」など、医療の特に外科の分野で使われることが多いと思います
しかし、癒着は腸や腹膜だけで起きるものではなく、組織は「結合組織」という共通したもので作られており、体全体で癒着が起きる可能性があります
この大きな括りの組織は「Fasia(ファシア)」と呼ばれています
このファシアの定義が少し複雑になっていて、「筋膜」として使われることも多いですが、諸外国では筋膜以外の組織についてもファシアと呼ばれています
ということは、体全体の結合組織という臓器や筋肉、骨などを包む「膜状のシート」があって、その大きな括りの組織の中の一部に「筋膜」があります
膜がどこかで癒着して動かなくなると、臓器の障害や動きづらくなることでの身体の重たさ、痛みに繋がってきてしまいます
そんな膜の癒着ですが、治す方法があるのか?
それは程度によるとされています
癒着の程度
癒着の程度と治療の関係は「日本整形内科学研究会」で示されています
今までは癒着の程度が区別されていなかったので、理学療法士が「癒着を剥がす」
と言っていても、外科医からすれば「癒着を剥がすなんて」といった風に職種間で乖離がありました
確かに僕も手術見学に何回か入ったことがあるのですが、「これは徒手で剥がせるものじゃないな」って感じたことを覚えています
そんな中、この癒着に対する程度の分類が出たことで理解が深まりました
僕が見学した「癒着剥離術」ではGrade4に相当する癒着だったんだと思いますし、理学療法士が徒手的に行ういわゆる「筋膜リリース」はGrade1に当てはまります
ストレッチやヨガ、ピラティスの後に起きる身体の軽さは「循環改善による筋柔軟性の改善」もあると思いますが、Grade0-1の軽い癒着が剥がれた結果とも考えられます
ということは、一度起きてしまった癒着に関しては程度によって剥がせることもあれば、手術や注射(ハイドロリリースといって、生理食塩水を注射器で癒着部分に入れることで剥がす方法)
じゃないと剥がれないこともあります
ではこの癒着がどのようにして起きるのでしょうか?
癒着が起こる原因
ファシアが癒着する原因には
①炎症によるもの
②筋の緊張異常によって起こるファシアの緊張や血流低下によって起こるもの
があります
炎症によるものに関しては怪我もありますが、使い過ぎることで起こるオーバーユース(微細な炎症)や筋肉が張ってしまって、血流が低下したことで癒着が起こることが多いとされています
程度の強い癒着というものは大きな手術や怪我などで組織の修復も必要になるような炎症状態の時に起きますが、軽い癒着というものは筋肉やファシアが張っている状態で血流が乏しくなった時などに起きやすくなります
その、筋肉やファシアの張りというものは筋肉のバランスや弱さ、普段取りやすい姿勢が原因となることが多く、癒着は仕方ないものではなく事前に予防ができる問題も多くあるということになります(身体作り)
対策
では、実際の生活はどうでしょうか?
例えば運動不足や長時間の同じ姿勢などで腰が重だるくなったとします
それぐらいでは病院に行かないし、家で簡単な体操をしようとします
けど、方法が分からないのでなんとなく生活していたら、痛みがなかなか治りません
やっとのことで行った病院では骨折やヘルニアなど緊急的なものでなければ湿布による経過観察が多いかと思います
そうなってくると痛みが慢性化しますし、癒着が起きやすい環境になってしまいます
ずっと我慢した状態になると、癒着だけではなく組織が分厚くなってしまうこと(マメに似ている)にもなるので柔軟性を取り戻すことが難しくなってしまいます
収拾がつかなくなってからではなくて、痛みが出始めた早い段階で対応することによって、後から起こる痛みや不調を予防することが必要にないります
痛くなって、その後に鍼やマッサージで良くなったとしても(昔からある東洋医学を否定しているわけでなく症状を取ることは素晴らしいこと)、根本の姿勢や筋力のアンバランスを修正していくことが必要になり、これには「トレーニング」が必要になってきます
ある程度の癒着を徒手的もしくは鍼などで剥がして、トレーニングを行なって根本的な原因を防いで次に起きないようにする
水漏れの蛇口があったとして、こぼれた水を拭くことと、蛇口から水漏れを止めること。
これが癒着に対して必要なことだと思っています
Alterでは身体面の困っていることや困りそうなことを徒手や問診で丁寧に評価し、問題点を把握した後にコンディショニングを行い身体を調整しながら、適したトレーニングを実施し、身体機能や姿勢を変えていく場所になります
よければご利用ください
コンディショニング&フィットネススタジオAlter代表。理学療法士歴15年。ICU〜在宅まで幅広く経験。認定理学療法士(運動器・呼吸器)、呼吸療法認定士、心リハ指導士。論文執筆経験あり。関節ファシリテーションや運動器エコー、ピラティスなどを学んでおり体について悩んでいる人を運動療法で救っていきたいと思っています。